[FT]ビットコイン狂想曲、過去のバブルよりも劇的
2017/11/30 6:50
Financial Times
今年に入って初めて2000ドル台を突破したばかりの仮想通貨ビットコインが27日、1万ドルの大台を突破しかけた(訳注:29日には突破した)。この高騰ぶりは大したものだ。だが、過去1年間のビットコインブームはある意味で、2000年3月についに弾けた米ナスダック市場のITバブルの再来だという主張は、全く的外れだ。
2010年にビットコインの売買が始まって以来、年間平均の実質リターンは411%にのぼっている
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2010年にビットコインの売買が始まって以来、年間平均の実質リターンは411%にのぼっている
ビットコインは今年に入ってから軌道に乗ったかもしれないが、読者の皆さんは、多くの人が1年前にビットコイン相場は常軌を逸していると考えていたことを覚えておいでかもしれない。2010年にビットコインの売買が始まって以来、年間平均の実質リターンは411%にのぼっている。こんな上昇率は近代、どんな株式市場でも見られなかったたぐいのものだ。世界の株式は1990年以降、平均年間リターンが6.5%にとどまっている。
美術品市場ではこのところ、目を見張るようなことが起きたが、ビットコインの比ではない。また、いずれにせよ、美術品は本当の意味でビットコインより希少だ。
■天才ニュートン、高値づかみで大損
しかし、歴史をもっとさかのぼると、ビットコインよりすごい熱狂的な投資ブームが確かにあったようにみえる。まずは、当然ながら、今やハリウッド映画にもなったオランダのチューリップバブルからみていこう。
オランダの記録は、ビットコインと並べた日足チャートを作成できるほど正確ではなかった。また、すべてのチューリップの球根が比較可能だったわけでもない。球根が希少なほど、また程度の差こそあれ美しいほど、高値がついた。チューリップバブルの最中に信頼できる形で記録された球根1個の最高値は5200ギルダーだった。
これは同じ頃にオランダを代表する画家レンブラントが名作「夜警」に付けた値段1600ギルダーの3倍以上にのぼることから、バブルは行き過ぎだったように思える。
ありがたいことに、「ビザルデン」という特に珍しいチューリップの球根1ポンド分の相場については、バブル最後の4カ月間の比較可能な記録がある。チューリップバブルはこの4カ月間で2200%超の上昇を演じた後、1637年9月の第1週に唐突に終わった。ビットコインは過去4カ月間で253%しか上昇していない。このため、ビットコインはまだ、かつてのチューリップの球根ほどには熱狂的に買われ過ぎていないことになる。
だがここで、球根は物理的に存在し、球根の価格はほかの物理的なモノと比較できることに留意してほしい。国が規制を敷くリスクがあるビットコインを、物理的な物価的なモノと同様に評価ができるかどうかは不透明だ。
もう一つ、最終段階でビットコインを上回る暴騰を演じたバブルの例が、1721年に大勢の英国人がカモになった南海泡沫(ほうまつ)事件だ。ただし、このバブルには明らかな詐欺がからんでいたことに留意しなければならない。買った人は、売り出されている資産について基本的なウソをつかれていた。また、このバブルは、今日まで続いているビットコインブームほど長続きしなかったことにも注意してほしい。狂気の最後の数週間で、南海会社の株価は800%の急騰を演じた。
そして、このバブルにだまされたのは愚か者だけではなかった。歴史上、最も偉大な天才の一人に数えられるアイザック・ニュートンは、ほぼ最高値で南海会社の株を買い大損した。
■急騰した価格はいずれ急落する
より大きな教訓は、投資現象や投機現象としてのビットコインは、長年の間にみられたどんな現象とも似ていないということだ。チューリップバブルほど過熱していないとはいえ、きちんと記録が残っている大半のバブルよりも劇的な動きをみせている。
これは、ビットコインはほかの投資バブルとは比較不可能なことを示す兆候として受け止めることもできる。実際、現在の相場上昇を、普及過程で生じる「採用曲線」と呼ぶ多くの仮想通貨ファンなら、そうした見方をするだろう。
根本的な問題――つまり、ビットコインの価値の上昇は、通貨としての利用を難しくするという問題――は残る。最近の兆候を見ると、人々がビットコインをギャンブルの対象としていくらか買いたいと思う理由はよく分かるが、取引の決済通貨としてビットコインを選ぶ理由はなかなか理解できない。
だが、歴史の教訓についていえば、我々はほぼ文字通り、チャートの枠を飛び出した状態にある。多くの人(筆者もその一人)が解釈する歴史は、価格がいずれドスンと地に落ちることを示唆している。しかし、これがあとどれくらい続くのか、あるいは、そのタイミングがいつなのかの指標は示していない。もしかしたら、バブルが終わるまでに、ビットコインがビザルデン・チューリップの球根に肩を並べる可能性もある。
By John Authers
(2017年11月29日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/)
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